『永遠の回想』

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  エピローグ  

 いつかの空。
 その聞こえる声たちのように、明るい元気な空。
「おーい、迎えに来たよ」
「あっ、お兄ちゃん!」
 公園の中で遊んでいた小さな女の子は、迎えに来た兄を見て嬉しそうな声をあげる。そして、一緒に遊んでいた友達に別れを告げると、女の子は兄の所へ全速力で駆けた。
「さっ、帰ろう」
「うん!」
 2人は仲良く手を繋ぎ、家路を辿り始めた。
 道中、何をして遊んでいたのかを聞く兄に、妹は嬉々として答えていく。
 その嬉しそうな顔を見ていて、兄も嬉しそうな顔をしている。
 そして、今度は妹が兄に質問した。
「ねえ、お兄ちゃん」
「ん?」
「どうして、私の名前は『トワ』って言うの? 友達に聞かれたけど、わかんなかった」
「それはね、お父さんたちがトワとずっと一緒にいたいと思ったからだよ」
「ふーん」
「トワには、難しかったかな?」
「そんなことないもん。そっか、それで『トワ』かぁ。ふーん」
「やっぱり、分かってないだろ? 顔に『分からない』って書いてあるぞ」
「わ、わかっているもん! 一緒にいたいから『トワ』なんだもん! それに顔に文字なんて書いてあるわけないもん!」
「いや、鏡を見てみろ。顔が真っ黒になるほど書かれているぞ。早く綺麗にしないと、一生そのままかもしれない」
「……!」
 それを聞いたトワは、家に向かって全速力で走りだした。
「くっ、ちょっ、だめだ! あはっ、あははっ! 待って、トワ! 冗談、冗談だから!」
 兄――夜は、笑った。その素直な妹が可愛くって。
 そして、自分のどうしようもない困った性格に。
 空、いつかの空。
 その笑い声のように明るい空は、どこまでも広がっていった。
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