『球宴の夢想』

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  エピローグ  

「いかがでしたか?」
 その声が不意に聞こえたかと思うと、夢見る者の目の前に一人の少女が立っていた。
 それはここへ辿り着いた時に出会った少女。その少女が、夢見る者に笑顔を向けていた。
 気がつけば、会場はいつの間にか姿を無くしている。
「延長戦をしようぜ!」
「いや、日を改めて再試合をしよう」
 ただ声のみが、どこか遠くの方から耳に届いている。それが気になりながらも、夢見る者は少女の質問に答えて、会話は進んでいく。
 そのうち、夢見る者は、どこかおぼろげだった意識が徐々にしっかりしていくのを感じた。
 同時に、今いる世界が反比例するようにおぼろげになっていくのを。
「どうやら、この夢世界の閉じる時間が、お目覚めの時間が訪れたようですぅ」
 そのようだね、と夢見る者は以前も体験したこの現象を思い出しながら話した。
 そして、この先に待つ忘却についても。
「そうですね。大半の方は夢世界で体験されたことを、ここを離れた時点で忘れてしまいますぅ」
 だけど、と少女は話を続ける。
「また訪れれば、思い出しますよ。今回のように」
 少女の言葉は続くけれど、夢見る者には聞き取れなくなっていく。
 もう、目覚める時間はすぐそこだ。
 それが解っている少女は話を止めて恭しく一礼。顔を上げ、夢見る者へ笑顔を向けて小さく手を振った。

 ――また、ここでお会いましょう。

 そんな意味を込めて。
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